今回は3歳児健診のお話です。
何か他の健診よりいろいろやるんやんな~。
そうなんです。くわしくお話ししますね!
3歳児健診って何のためにするの?
何でこの時期に健診するんやろ?
子どもの成長の節目となる時期であり、法律で必ず実施するよう決められているからです。
3歳児健診の目的
3歳児健診は、母子保健法により自治体が必ず実施しなければならない健診であると決められていて、無料で受けられます。90%以上の自治体が集団健診で実施しています。
実施時期は、満3歳~満4歳になるまで(4歳になる前日まで)です。このあいだに実施すればいいので、具体的にどの時期に健診を行うかは自治体によって違います。3歳0か月~2か月児頃を主な対象とする自治体と3歳6か月児頃を主な対象とする自治体の大きく2つに分かれているようです。
実施内容は、問診・身体計測・医師診察・歯科診察・視力検査・聴力検査・尿検査・育児相談などです。3歳は子どもの成長の節目となる時期であり、特に視力や聴力、腎臓、社会的発達(対人関係など)に問題がないかどうかを確認します。
5歳児健診がない自治体では就学前最後の健診となることが多いです。
下の記事では乳幼児健診全体について書いていますので、こちらも参考にしてください。
3歳児健診でどんなことをするの?
3歳児健診では具体的にどんなことをするんやろ?
他の健診に比べてやることが多いですよね。3歳児健診特有のものについて説明します!
問診
育児状況や子どもの発達状況などについて確認します。
事前に問診票を書いてもらい、それに沿ってお話しします。普段気になっていることや困っていることがあったら問診票に書いてください。また、やり方は自治体によって違いますが、簡単に子どもの発達検査を行います。
名前や年齢を聞いたり、「誰と一緒に来たの?」「お昼ごはんは何を食べた?」などいろいろな質問をして子どもの理解力ややりとりの様子を確認します。自治体によっては積み木を積んだり、絵を描いたりすることもあります。
3歳頃はお友達との関係も広がってくる時期であり、幼稚園や保育園に通っている場合は集団生活での様子も確認します。
問診して必要と判断されれば、心理相談や栄養相談を案内される場合もあります。
視力検査
何で3歳児健診で視力検査するん?
視力発達の遅れや目の異常は3歳頃までに見つけて治療することが大事だからです。
子どもの目の機能は3歳頃まで急速に発達して、6~8歳頃までにほぼ完成します。
遠視や乱視(屈折異常)、弱視(視力発達の遅れ)を3歳頃までに見つけられないと治療が遅れ、生涯にわたって十分な視力を得られないことがあります。普段の生活では目の問題に気づかないことが多いので、3歳児健診で視力検査を行って、早めに問題を見つけることが大切です。
弱視は「視力が低い」ということですが、目に問題があるというよりは、脳の発育に問題がある状態です。本当は見えていたとしても、脳がその見えている物を認識しないと「見えた」ことにはなりません。そのため、適切な治療をしなければ眼鏡をかけても脳が見えている物を認識できず、視力が良くならないのです。
3歳頃までに弱視を見つけられれば、治療をして小学校に上がる前までに治すことができますが、目の機能が完成する6~8歳頃まで弱視に気づけないと、治療をしても十分に視力を上げることができません。
視力検査めっちゃ大事やん!
そうなんです。では、どんな検査をするのかお話ししますね!
3歳児健診で実施する検査は事前に家でやったり、健診会場でやったりと自治体によってやり方が違いますが、検査の種類としては大体2つです。
1つはランドルト環を使う検査、もう1つはフォトスクリーナーという機械を使う検査です。
視力検査でよく見る「C」の形を「ランドルト環」と呼びます。2.5m離れてランドルト環のどちらの方向が開いているか教えてもらうことで視力を測ります。両眼、左眼、右眼それぞれについて検査します。
ランドルト環の開いている方向を教えてもらう方法としては、子どもにも大きいランドルト環を切り取ったものを持ってもらい、くるくる回して同じ形にしてもらう方法と、指で開いている方向を指してもらう方法があります。
0.5の指標で両眼、左眼、右眼それぞれについて検査し、上下左右4方向のうち3方向以上正答したら「異常なし」と判断されます。
くわしい検査の方法については下の日本視能訓練士協会が公開している動画をご覧ください。
もし、この検査の理解が難しいようであればランドルト環ではなく、影絵のような動物の絵指標を使って動物の名前を言ってもらったり、同じ絵はどれか指してもらって視力を測る方法もあります。
両眼でやるとしっかり教えてくれるのに、片眼になるとふざけだす子もいます。集中力が切れたというより、見えにくくてふざけている場合もあるので何回かやってみて変わらなければ健診で相談しましょう。
画像はritz medicalホームページより
フォトスクリーナーというのは、遠赤外線を利用して眼の写真を撮影し、遠視や乱視などの屈折異常や斜視などがないか確認できる機械です。
機械から1m離れて、1人5~10秒ほど機械を見てもらうことで検査が終了します。
子どもにやってもらうことがほとんどなく、数秒で検査が終了するので、ランドルト環などによる視力検査はできなくてもこの検査はできる場合が多いです。視力検査ができない子どもの中に屈折異常による弱視が隠れている場合もあるため、視力検査だけでなく、機械を使った屈折検査も実施することが望ましいといわれています。
ここ数年でコンパクトかつ簡単に検査できる機械が登場し、令和4年度からは機械の購入に国から補助金が出るようになりました。そのため、3歳児健診でも機械による屈折検査を実施する自治体が増えてきています。
自治体の健診でやっていなくても小児科などで検査できる場合もあります。新潟市では令和5年10月から3歳児健診で屈折検査を行うようになりました。
聴力検査
何で3歳児健診で聴力検査するん?
小学校に上がる前に難聴を見つけることで、ことばの遅れを予防・軽減するためです。
最近は生まれてすぐ聴力検査をしていることが多いと思いますが、生まれてから次第に聴力が下がっていく病気もあります。また、中耳炎を繰り返すことで難聴になる場合もあります。
1歳~5歳の子どもに多い「滲出性中耳炎」は鼓膜の奥の「中耳」と呼ばれる部分に液体がたまった状態で、いつの間にかなっていることがほとんどです。滲出性中耳炎であっても通常は痛みがないのですが、軽度の難聴になってしまうことが問題になります。呼んでも振り向かない、テレビの音量を大きくするといった症状から見つかる場合が多いです。
軽度であっても難聴があることで、ことばの発達や精神的な発達に遅れが出てくるといわれているため、3歳児健診で難聴を見つけることは大切です。
この時期の聴力検査もやっぱり大事なんやなぁ。
そうなんです。それでは、どんな検査をするのかお話ししますね!
3歳児健診で実施する聴力検査は、子どもの耳に関するアンケートとささやき声検査です。健診前にアンケートに回答し、家でささやき声検査をして、その結果を健診に持っていく場合が多いと思います。
「はい」か「いいえ」で答える7つの質問があります。
- 家族、親戚の方に小さいときから耳の聞こえのわるい方がいますか。
- 中耳炎に何回か、かかったことがありますか。
- ふだん、鼻づまり、鼻汁をだす、口で息をしている、のどれかがありますか。
- 呼んで返事をしなかったり、聞き返したり、テレビの音を大きくするなど、聞こえのわるいと思うときがありますか。
- 保育所の保育士など、お子さんに接する人から、聞こえがわるいといわれたことがありますか。
- 話しことばについて、遅れている、発音がおかしいなど、気になることがありますか。
- あなたの言うことばの意味が、動作などを加えないと伝わらないことがありますか。
画像は日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「難聴を見逃さないために」より
6つの絵が描かれた紙を子どもに渡し、1mくらい離れて向かい合い、座ります。
まずは、絵の名前をそれぞれ普通の大きさの声で言って、その絵を指さしてもらいます。次に、口元を手などで隠し、ささやき声で言っても教えてくれるかを確認します。
耳に関するアンケートの結果と、ささやき声検査の結果をもとに精密検査が必要かどうかが判断されます。
尿検査
何で3歳児健診で尿検査するん?
腎臓や尿路に異常がないかを見つけるために尿検査をします。
尿検査は、尿の中のたんぱく・糖・潜血を調べることにより、腎臓や尿路に異常がないかを見つけるための検査です。早めに腎臓や尿路の問題を見つけて治療することで、慢性腎不全になることを予防するのが目的です。
慢性腎不全って何?
腎臓の大切な働きであるおしっこをつくる能力がずっと低い状態です。
腎臓にはいろいろな働きがありますが、その中で最も大切な働きが体の中のいらないもの(老廃物)をおしっこの中に捨てるということです。腎臓がうまく働かず、体の中に必要なものを外に出してしまったり、必要ないものが体に残ってしまったりすることで、疲れやすくなったり、身長が伸びなかったり、貧血になったりするなどいろいろな症状が徐々に出てきます。
子どもの慢性腎不全の原因は生まれつきの病気であることが多く、そのうちの約半数が腎臓や尿路の形や大きさに異常があることで起こります。早めに見つけて、早めに治療して腎臓の働きが悪くなるのを防ぐことが大切です。
検査して、たんぱくや潜血があったら心配やな…
健診で再検査が必要になっても病気が見つかることは少ないです。ただ、しっかり経過を見ることは大切です。
健診でたんぱくや潜血、糖が出ていると判断されると、病院(自治体によっては別日の健診会場)での再検査となります。幼児期の場合、たんぱく尿や血尿が出たとしても、精密検査の結果病気が見つからないことも多いです。ただし、まれに病気が見つかることもあるのでしっかり再検査を受けることは重要ですし、定期的な尿検査で症状が悪化しないか確認することも大切です。
3歳児健診の案内と一緒に採尿キットが送られてきます。自治体によって違いはありますが、基本的には大人と同じでカップにおしっこをしてもらい、提出容器に移し替えるものです。健診当日のおしっこが必要ですが、朝一じゃなくても大丈夫です。家でとれなかったら健診中でもOKです。受付の時にスタッフに話してください。
少しのおしっこでも検査できる場合が多いので、ちょっとでもとれたら持っていってみましょう。
紙コップなどで事前に何回か練習しておくとスムーズかなと思いますが、カップにおしっこするのが難しければ、「おしっこゾウさん」という商品もあります。トイレに取り付けて普通におしっこしてもらうだけ。うちの子も健診の時にこれを使い、簡単に採尿することができました。
オムツの場合おしっことれるんかな…?
オムツでもおしっこがとれる方法はあります。
オムツの場合は、寝る前にオムツにラップなど水を通さないものを敷き、テープなどで固定します。その上に清潔なコットンやガーゼなどを多めに置いておき、朝起きてからコットンなどにしみこんだおしっこをカップにしぼって容器に移すという方法があります。
他にもナプキンや小児用の採尿パックを使うという方法もあるみたいです。検索すると実際に試した方のレポートなどが出てくるので参考になります。いずれにせよ事前に何回か試して上手にとれる方法を探ってから本番に臨む方がいいかなと思います。
実際の3歳児健診ってこんな感じ!
実際の3歳児健診ってどんな感じなん?
新潟市の3歳児健診を例にしてお話ししますね!
実施時期:3歳6か月頃
実施場所:お住まいの区の健康センター・保健福祉センター
持ち物:母子健康手帳、問診票、健診当日の尿、フッ化物塗布料金1020円(希望者のみ)
所要時間:約2時間
3歳児健診の流れと具体的な内容【新潟市の場合】
健診対象月の1か月前に新潟市から3歳児健診の案内が届きます。健診の日時・場所が指定され、問診票や健診内容の説明、視力・聴力検査セット、採尿セットが入っています。
健診前に案内に同封されている問診票を書いておきましょう。ことばについて、排泄について、くせなどについて、食事について、生活リズムについて、育児状況についてなどの質問があります。
家でランドルト環による視力検査とささやき声検査を実施し、問診票に結果を書いてください。新潟市では健診会場での再検査は行いません。実施し忘れた場合、健診が終わってから家で実施した結果を連絡してもらうことになります。
健診が始まるまでにおしっこをとって提出容器に入れてください。もし健診までにとれなかったら、受付で紙コップを渡されるので健診中にとってください。尿検査ができなかった場合は、別の日の3歳児健診におしっこと母子手帳を持っていき、検査してもらうことになります。
母子手帳・問診票・尿容器を受付に提出します。受付時間は対象者ごとに細かく分かれていて、会場に着いた順に受付されます。
機械を使って目の検査をします。少し暗い部屋に入ってお子さんに機械に映る画像を5~10秒ほど見てもらう検査です。
令和5年10月から新しく増えた検査項目です。
保健師や看護師による問診があります。名前や年齢などお子さんと少しやりとりをした後、問診票に沿ってお話しします。
服を脱いで、身長・体重・頭囲を測ります。
小児科医師による視診、触診、聴診、運動発達の確認などがあります。お子さんの様子で気になっていることは聞きましょう(問診票に書いておくとより確実に確認できると思います)。診察所見、問診内容、体格、視力・聴力・尿検査結果を総合的に見て、精密検査が必要と判断されると紹介状が発行されます。
歯科医師による診察の後、歯科衛生士による歯科指導、フッ化物塗布(希望者のみ)があります。フッ化物塗布希望者はここで料金1020円を支払います。
身体測定の数値や診察・検査の結果が伝えられ、母子手帳が返却されます。問診などの結果、心理相談が必要な場合は心理相談員による心理相談、栄養相談が必要な場合は栄養士による栄養相談もあります。医師診察で精密検査が必要と判断された場合は、紹介状が渡されます。健診の最後なので、分からないことや聞き忘れたことはここで聞きましょう。
紹介状が出た場合は、忘れずに病院を受診してください。
これは新潟市の例ですが、どこの自治体も流れは大体こんな感じです。コロナの影響で集団でのお話などはなくなっているところが多く、以前に比べると短時間で終わるようになっています。
3歳児健診に行かなかったらどうなるの?
もし3歳児健診に行けなかったらどうしたらいいん?
何らかの理由で健診に行けない場合は、必ずお住まいの自治体にご連絡ください。ちなみに4歳の誕生日前日までは受診できるので日程を変更することも可能です。
子どもに病気や障がいがあり健診に行けない、定期的に受診しているので健診に行く必要がないという方や集団健診では日時や場所が指定されているため、仕事などの都合がつかず行けないという方もいらっしゃると思います。
その場合はお住まいの自治体(健診担当部署)に連絡していただき、健診が受診できない理由をお話しください。受診できない理由を確認した上でどうしたらいいかお話があると思います。
健診未受診の場合も自治体は子どもの存在を必ず目視で確認することになっていますので、電話で保護者の方とお話しするだけでは終わりません。通っている保育所や幼稚園で遊んでいる姿を確認したり、自宅などに訪問して実際に子どもと会える機会を作ることになります。
くわしくは下の記事も参考にしてください。
参考サイト
- 厚生労働省「標準的な乳幼児期の健康診査と保健指導に関する手引き~「健やか親子21(第2次)」の達成に向けて~」
- 国立成育医療研究センター「乳幼児健康診査事業実践ガイド」
- 新潟県結婚・子育てポータルサイト ハピニィ「乳幼児健康診査の手引」
- 日本眼科医会「3歳児健診における視覚検査マニュアル」
- 日本弱視斜視学会「三歳児健診のご案内」
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「難聴を見逃さないために 3歳児健康診査」
- 日本小児腎臓病学会「血尿と蛋白尿」・「慢性腎不全(腹膜透析・腎移植)」
- 日本腎臓学会「1.腎臓の構造と働き」・「9.小児の腎疾患」