今回は1歳で受ける予防接種のお話です。
0歳の予防接種がひと段落してるから忘れがちよな…
1歳も大事な予防接種がたくさんなので、分かりやすくお伝えしますね!予防接種とは何か、予防接種の受け方などについては下の記事をご覧ください。
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1歳で受けられる予防接種
1歳で受けるワクチンも結構あるんやんな?
そうなんです。1歳になったら早めに受けてほしいワクチンがたくさんあるので紹介しますね。
ヒブワクチン(定期接種)
インフルエンザ菌b型による感染症(ヒブ感染症)を防ぐワクチンです。ヒブ感染症は細菌性髄膜炎や喉頭蓋炎など死ぬ可能性のある重い病気を引き起こします。
標準的なスケジュールでは、0歳の頃に3回接種し、1歳になったら早めに追加で1回接種(3回目接種からの間隔は7か月以降13か月未満)します。
1歳代に追加接種を受けることで予防効果が長続きします。
副反応としては、接種したところが赤くはれたり、しこりになったりする場合がありますが、ほとんどは1日くらいで自然に治ります。
小児用肺炎球菌ワクチン(定期接種)
肺炎球菌感染症を防ぐワクチンです。子どもの肺炎球菌感染症は重症になりやすく、細菌性髄膜炎や菌血症など死ぬ可能性のある重い病気を引き起こします。
標準的なスケジュールでは、0歳の頃に3回接種し、1歳になったら早めに追加で1回接種(3回目接種からの間隔は60日以上で、1歳0か月以降1歳3か月未満で接種)します。
1歳代に追加接種を受けることで予防効果が長続きします。
副反応としては、接種したところが赤くなったり、しこりができたりすることがありますが、自然に治ります。また、38℃以上の発熱がある場合もありますが、ほとんどは何もしなくても1日くらいで治ります。
四種混合ワクチン(定期接種)
ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオの4つの病気を防ぐワクチンです。
ジフテリアはジフテリア菌がのどなどに感染して起こる病気です。呼吸ができなくなったり、神経や心臓の筋肉がやられて死ぬこともあります。
破傷風は土などから破傷風菌が傷口に入って起こる病気です。筋肉がこわばり、うまく体を動かせなくなります。最悪の場合は死ぬこともあります。
百日咳は百日咳菌がのどなどに感染して起こるとても感染力の強い病気です。長い時間咳が続いてとても苦しいのが特徴で、最悪の場合死ぬこともあります。
ポリオはポリオウイルスによって感染する病気で、多くの場合目立った症状は出ません。しかし、1000~2000人に1人は手足を動かすことや呼吸がしにくくなるマヒ状態になり、一生障害が残ることがあります。
標準的なスケジュールでは、0歳の頃に3回接種し、1歳になったら早めに追加で1回接種(3回目接種からの間隔は12か月~18か月)します。
1歳代に追加接種を受けることで予防効果が長続きします。
副反応としては、接種したところが赤くはれたり、しこりになったりする場合があります。ほとんどは自然に治り、問題になることはありません。ただし、腕全体が腫れるようなことがあればかかりつけ医を受診してください。
麻しん・風しんワクチン(定期接種)
「MRワクチン」とも呼ばれ、麻しんと風しんの2つの病気を防ぐワクチンです。
標準的なスケジュールでは1歳になったら早めに1回目の接種をし、小学校入学前の1年間(6歳になる年度:4月1日~3月31日)で2回目を接種します。
副反応としては、接種後5~10日後に発熱する場合があります。ほとんどは1~2日で自然に良くなるので心配いりませんが、まれに熱性けいれんを起こすことがあります。けいれんなど変わった症状が見られたらすぐに受診してください。
麻しんは麻しんウイルスによって起こるとても感染力の強い病気です。
はじめは発熱や咳、鼻水など風邪のような症状が出ますが、発熱3~4日目から体に赤い発疹が出て、口の中に「コプリック斑」と呼ばれる麻しん特有の白いブツブツがみられます。高熱は7~10日間くらい続きます。
また、合併症を起こしやすい病気であり、気管支炎、肺炎、脳炎などが約30%の人におこり、肺炎や脳炎で亡くなる人も多数います。
そして、麻しんが治って数年~10年程度たってから亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる難病中の難病ともいわれる病気になることもあります。知能の障害や運動の障害などが起こって寝たきりになり、やがて死に至る病気です。残念ながら根本的な治療法はまだありません。
治ってから何年も経ってまたウイルスが原因で病気になるなんてことあるんやな…
麻しんウイルスが脳にも感染していて、何年もかけてゆっくりと脳を攻撃していくんです。SSPEが起こるのは2歳未満で麻しんにかかった人が最も多いと言われているので、1歳になったらすぐワクチンを打って麻しんに感染しないようにするのがとても大切です。
最近も海外から帰ってきた人が麻しんに感染してて話題になってたけど、もう流行してほしくないなぁ…
麻しんは年齢にかかわらず重症になる可能性のある病気です。大人もワクチンを2回受けてない場合や接種したか分からない場合には接種しておきましょう。流行させないことが大事です。
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の具体的な症状などについてはSSPE患者の家族会「SSPE青空の会」のホームページもご覧ください。
風しんは風しんウイルスによって起こる病気で、発熱や発疹、首の周りや耳の後ろの腫れなどが主な症状です。
大抵は軽症で済みますが、脳炎や血小板減少性紫斑病など重い合併症が起こることがありますし、妊娠中(特に妊娠初期)の女性が感染するとお腹の中の赤ちゃんにも感染し、生まれてきた赤ちゃんが先天性風しん症候群(CRS)という重い病気を発症することがあります。
先天性風しん症候群は生まれつきの心臓病、白内障、難聴、発育発達の遅れなどが主な症状です。
2012~2013年に風しんが流行した時には45人の赤ちゃんが先天性風しん症候群と診断されました。そのうち11人は生後1年余りまでに亡くなっています。
子どものワクチン接種も大事やけど、パパやママもワクチン受けてなかったり風しんの抗体が少ない場合にはワクチン接種して病気を予防した方がええな。
30代~50代の方はMRワクチン接種が不十分な場合が多いので、特に妊娠する可能性のある女性とその周囲の方にはMRワクチンの接種をおすすめします。
水痘ワクチン(定期接種)
水痘(水ぼうそう)を防ぐワクチンです。
標準的なスケジュールでは、1歳になったら早めに1回目を接種し、1回目から3か月以上経ったら2回目を接種します。
副反応はほとんどありませんが、1回だけの接種では数年以内に約20~50%の人が発症しますので2回接種することが大切です。
水痘は水痘帯状疱疹ウイルスに感染することによって起こるとても感染力の強い病気です。
発熱と一緒にまばらで盛り上がった発疹が全身にできます。発疹は体のすべての場所に出て、強いかゆみもあります。発疹は水ぶくれになった後、7~10日くらいでかさぶたになります。かさぶたになると感染力はなくなります。
多くの場合はそれほど重くはなりませんが、脳炎や肺炎、皮膚の重い細菌感染症など合併症を起こすこともあり、毎年10人以上が水痘で亡くなっています。
また、一旦水痘にかかると、治った後も体の中ではウイルスが生き続けているため、免疫が落ちた時に帯状疱疹にかかることがあります(50歳以降が多い)。
帯状疱疹って何か痛くなるやつやんな?
そうです。体の左右どちらかにチクチクした痛みが出て、そのあと赤い発疹や水ぶくれが帯状にできます。多くの場合は皮膚の状態がよくなると痛みもなくなりますが、後遺症として激しい痛みが続いてしまう場合もあります。
麻しんもそうやけど、一度ウイルスに感染するとしばらく経ってからまた悪さをすることもあるんやなぁ…
怖いですよねぇ…。だからウイルスに感染しないようワクチンで予防することが大事なんです。
おたふくかぜワクチン(任意接種)
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)を防ぐワクチンです。
標準的なスケジュールでは、1歳になったら早めに1回目を接種し、小学校入学前の1年間で2回目を接種します。
おたふくかぜはムンプスウイルスに感染することによって起こる病気です。
症状が出ない人もいますが、発熱と唾液腺(耳の前から下あたり)の腫れや痛みが主な症状です。唾液腺の腫れは、症状が出始めて1~3日がピークで、1週間ほどでよくなります。発熱は数日続きます。
おたふくかぜは軽症ですむ場合も多いのですが、多くの合併症があり、重症になる可能性もあります。
主な合併症としては、無菌性髄膜炎(約50人に1人)、重度の難聴(約1000人に1人)、脳炎(毎年約30人)などがあります。また、妊婦が感染すると流産する危険性が高くなります。
世界の多くの国ではおたふくかぜワクチンを定期接種で受けているのですが、日本は任意接種のため、平均すると毎年約60万人の子どもがかかって、5000人程度が入院していると報告されています。
副反応としては、接種後10~14日後に微熱が出たり、耳の下、ほほの後ろ、あごの下などが腫れる場合がありますが、自然に治ります。
また、接種後3週間前後で40000接種あたり1人程度の割合で無菌性髄膜炎になることがあります。発熱や嘔吐、不機嫌が続いたら受診してください。ただし、ワクチンによる無菌性髄膜炎の発生率は接種しないで自然感染するよりもずっと低く、重症にもなりにくいものです。
任意接種やけど大事なワクチンってことやね。
重症にならないとは言い切れないので、病気自体を予防することが大切です。WHOは定期接種にすべきワクチンと言っていますので、おたふくかぜワクチンも早く定期接種になってほしいですね。
インフルエンザワクチン(任意接種)
インフルエンザを防ぐワクチンです。
インフルエンザは発熱、頭痛、全身のだるさ、筋肉や関節の痛みなどが出る病気です。また、肺炎や脳炎などの重い病気を引き起こしやすく、死んだり、重い後遺症が残る可能性もあります。
6か月以上13歳未満の子どもは2回接種が必要です。インフルエンザの流行が始まる前の10月~11月にワクチン接種を始めることがすすめられています。1回目から2~4週(できれば4週)あけて2回目を接種しましょう。
インフルエンザワクチンはシーズンごとに流行が予測されるウイルスに合わせて作られているので、毎年接種することがすすめられています。
副反応としては、接種したところが赤くはれたり、痛くなったりする場合があります。また、発熱や頭痛が起こる場合もありますが、いずれも2~3日で自然に良くなります。そして、とてもまれですが、ショックやじんましん、呼吸困難などのアレルギー症状が現れることがあります。強い卵アレルギーの方はかかりつけ医と接種について相談してください。
新型コロナワクチン(臨時接種)
新型コロナウイルス感染症を防ぐワクチンです。
新型コロナウイルス感染症は新型コロナウイルスによって起こる感染症で、2019年末頃から今まで世界中で流行しています。
新型コロナウイルス感染症では、発熱や咳、倦怠感などのかぜに似た症状が出ます。症状がない場合もありますが、味覚や嗅覚がなくなったり、頭痛、下痢、皮膚の発疹などの症状が出てくる場合もあります。
子どもは大人よりも症状が軽いと言われていますが、発熱や倦怠感、のどの痛み、嘔吐など子どもにとってつらい症状が出ることもありますし、肺炎や熱性けいれん、脳炎、心筋炎など重い病気を引き起こすこともあります。
2022年以降子どもの感染が増えたことにより、重い病気になって入院したり、死んだりしてしまう子どもが増えています。これまで特に大きな病気がない子どもが死んでしまったケースもあります。
また、コロナ発症時の重症度に関わらず、強い倦怠感やブレインフォグ(記憶障害、集中力不足、精神的疲労など)などの後遺症が残ることもあり、子どもたちの将来への影響が心配されています。
新型コロナワクチンの対象年齢は生後6か月以上です。無料で接種することができます。生後6か月~4歳の子どもでは3回接種が必要で、標準的なスケジュールでは、1回目の3週間後に2回目、2回目の8週間後に3回目を接種します。
3回接種が終わった方は2023年9月20日以降に(3回目から3か月以上あけて)追加接種が1回ある予定です。
新型コロナワクチンの前後にインフルエンザ以外のワクチンを受けるときには、2週間以上あけることが必要です。インフルエンザワクチンの場合は同時接種や期間をあけずに(次の日でも)接種することが可能です。
でも新しいワクチンやから打つの心配やなぁ…
その気持ちはよく分かります。子どものことだし慎重になりますよね…。ただ、副反応は大人よりも軽く、重い副反応は報告されていません。娘は2歳の時に3回接種しましたが、いずれも特に副反応なく次の日も元気に保育園に行けました。ただの一例ですが、参考になればと思います。
2022年以降子どもの新型コロナウイルス感染症が増えてきたことや、ワクチンの効果(発症や重症化を予防する)の大きさを考えて厚生労働省や日本小児科学会では生後6か月以上の子どもすべてに新型コロナワクチン接種を推奨すると言っています。以下のサイトも参考にしていただければと思います。
厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A 乳幼児接種(生後6か月~4歳)」
日本小児科学会「生後6か月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」
新潟県医師会「子どもの新型コロナウイルス感染症への対応について」
接種スケジュール例
どんなスケジュールで受けたらいいか教えてくれへん?
一例をお伝えしますね。
麻しん風しんワクチン1回目、水痘ワクチン1回目、おたふくかぜワクチン1回目
ヒブワクチン4回目、小児用肺炎球菌ワクチン4回目
※ヒブワクチン4回目は3回目から7か月~13か月あけて接種
四種混合ワクチン4回目、水痘ワクチン2回目
※四種混合ワクチンは3回目から12~18か月あけて接種(接種自体は6か月あけると可能)、水痘ワクチンは1回目から3~12か月あけて接種。
インフルエンザワクチン1回目、2回目
※インフルエンザワクチンは生後6か月以上で毎年10~11月に接種が推奨されています(1回目と2回目の間は2~4週間あけて接種)。
新型コロナワクチン
※2024年3月31日まで初回接種(1~3回目)を無料で受けることができます。初回接種が終わった方は2023年9月20日以降に(3回目接種から3か月以上あけて)追加接種が1回受けられます。
2024年度以降は新型コロナワクチンが有料になると言われています。
予防接種スケジュールについては、KNOW★VPD!が作ったスケジュール表が見やすいのでご活用ください。
1歳すぐの麻しん風しんワクチン・水痘ワクチン・おたふくかぜワクチンなどは「同時接種」がすすめられています。
「同時接種」とはいくつかの異なるワクチンを同じタイミングで接種することです。同時接種をすることで医療機関に行く回数が減るので、保護者の方の時間的な負担を大幅に減らすことができます。
1回に何本も注射を打ったりすることになるので心配になるとは思いますが、同時接種をしても副反応が増えたり、予防効果が落ちたりすることはありませんので安心してください。
どういうスケジュールで打つか、かかりつけの先生と相談しながら予防接種を進めていただければと思います。
新型コロナワクチンについてはインフルエンザワクチンのみ同時接種可能です。他のワクチンとは前後2週間以上あけないといけませんのでご注意ください。