今回は予防接種のお話です。
生まれてすぐから予防接種始まるけど何かいっぱいあるし、よう分からんわ…
予防接種とはどういうものか、気になるスケジュールや副反応についても分かりやすくお話ししますね!
予防接種ってなに?
そもそも「予防接種」ってなんやの?
「重い病気にならないようにワクチンを接種すること」です。
「ワクチン」とは、病気の原因となるウイルスや細菌を精製・加工したもの。病原性や毒性は弱めたりなくしたりしているので、体にとっては安全な状態のものです。
ワクチンを接種すると、一度かかると死んでしまったり、重い後遺症が残ってしまうかもしれない病気に対する免疫をつけることができます。免疫をつけるためにワクチンを接種することを「予防接種」といいます。
自然にかかって免疫をつけるんじゃだめなん?
とにかく病気にかからないことが大事です!
病気になると死んでしまったり、重い後遺症が残ることがあります。ワクチンを接種して重い副反応が起こるよりも、ワクチンを接種せずにその病気にかかって重症になる確率のほうがはるかに高いんです。
また、周りの人にまで病気をうつしてしまう可能性もあります。ワクチンで予防できる病気はワクチン接種で予防するのが最善の方法です。
定期接種と任意接種ってなに?
予防接種には「定期接種」と「任意接種」の2種類あるって聞いたけど何が違うん?
ワクチンが「予防接種法」に書かれているか、いないかの違いです。
定期接種のワクチンは「予防接種法」と呼ばれる予防接種の規則を定めた法律に書かれていて、住民票のある自治体で受ける場合には公費(基本的に無料)で受けられます。
任意接種のワクチンは国が使用を認めているものの「予防接種法」には書かれていません。接種を希望する場合は費用を自己負担する必要があります。ただし、自治体によっては費用の助成をしている場合もありますので、お住まいの自治体にご確認ください。
制度上の違いがあるだけで、どちらも重要なワクチンなんです。
ワクチンにはどんなものがあるの?
ワクチンって何かいろいろあってよく分からないんやけど…
0歳で受けられる主なワクチンについて紹介しますね。
B型肝炎ワクチン(定期接種)
B型肝炎を防ぐワクチンです。B型肝炎はウイルスの感染によって肝臓の働きが悪くなってしまう病気です。
赤ちゃんの頃に感染した場合、症状がない状態で経過することが多いですが、ウイルスが体の中に残り続け、将来肝臓がんなどへ進行する可能性があります。
標準的なスケジュールでは、生後2か月から計3回接種します。
ロタウイルスワクチン(定期接種)
ロタウイルスによる胃腸炎を防ぐワクチンです。ロタウイルスに感染すると、激しい下痢や嘔吐、発熱などが起こります。脱水を起こしやすく、赤ちゃんの場合は特に注意が必要な病気です。
ロタウイルスワクチンには2種類あり、「ロタリックス」は計2回、「ロタテック」は計3回の接種が必要です。どちらのワクチンを選んでも予防効果に明らかな違いはありません。口から飲むワクチンです。
標準的なスケジュールでは生後2か月から接種を始めます。接種できる期間が短いので接種スケジュールは早めに立てておきましょう。
2020年10月から定期接種となりましたので、2020年8月以降に生まれたお子さんは基本的に無料で受けることができます。
自費だと全部で3万円くらいかかるから定期接種になってほんとよかった!
ヒブワクチン(定期接種)
インフルエンザ菌b型による感染症(ヒブ感染症)を防ぐワクチンです。ヒブ感染症は細菌性髄膜炎や喉頭蓋炎など死ぬ可能性のある重い病気を引き起こします。
細菌性髄膜炎はかかった子どもの半数以上が0歳の赤ちゃんで、ヒブ感染症によるものは生後6か月以降からかかる赤ちゃんが増えてきます。それまでに免疫をつけておくことが大切です。
標準的なスケジュールでは、生後2か月から計4回接種します。
ちなみに冬に流行するインフルエンザとは全く関係ありません。まぎらわしいですね。
小児用肺炎球菌ワクチン(定期接種)
肺炎球菌感染症を防ぐワクチンです。子どもの肺炎球菌感染症は重症になりやすく、細菌性髄膜炎や菌血症など死ぬ可能性のある重い病気を引き起こします。
細菌性髄膜炎はかかった子どもの半数以上が0歳の赤ちゃんで、肺炎球菌によるものは生後6か月以降からかかる赤ちゃんが増えてきます。それまでに免疫をつけておくことが大切です。
標準的なスケジュールでは、生後2か月から計4回接種します。
ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンは2013年に定期接種になりました。それ以降、子どもの細菌性髄膜炎の発生率は大幅に減少しています。
四種混合ワクチン(定期接種)
ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオの4つの病気を防ぐワクチンです。
ジフテリアはジフテリア菌がのどなどに感染して起こる病気です。呼吸ができなくなったり、神経や心臓の筋肉がやられて死ぬこともあります。
破傷風は土などから破傷風菌が傷口に入って起こる病気です。筋肉がこわばり、うまく体を動かせなくなります。最悪の場合は死ぬこともあります。
百日咳は百日咳菌がのどなどに感染して起こるとても感染力の強い病気です。長い時間咳が続いてとても苦しいのが特徴で、乳児の場合そのまま息が止まって死ぬこともあります。
ポリオはポリオウイルスによって感染する病気で、多くの場合目立った症状は出ません。しかし、1000~2000人に1人は手足を動かすことや呼吸がしにくくなるマヒ状態になり、一生障害が残ることがあります。
標準的なスケジュールでは、生後2か月から計4回接種します。
これまで生後3か月から接種開始でしたが、2023年4月以降は生後2か月から接種できるようになりました。
BCGワクチン(定期接種)
結核を防ぐワクチンです。結核は咳や痰、微熱などが長く続くことが特徴で、特に1歳未満では重くなりやすい病気です。結核菌が体中に広がったり、結核性髄膜炎を引き起こすと死ぬ可能性もあります。
標準的なスケジュールでは、生後5~8か月で1回接種します。
「はんこ注射」と言われてるやつやね。
BCGワクチンについては下の記事も参考にしてください。
インフルエンザワクチン(任意接種)
インフルエンザを防ぐワクチンです。インフルエンザは発熱、頭痛、全身のだるさ、筋肉や関節の痛みなどが出る病気です。また、肺炎や脳炎などの重い病気を引き起こしやすく、死んだり、重い後遺症が残る可能性もあります。
6か月以上13歳未満の子どもは2回接種が必要です。インフルエンザの流行が始まる前の10月~11月にワクチン接種を始めることがすすめられています。
インフルエンザワクチンはシーズンごとに流行が予測されるウイルスに合わせて作られているので、毎年接種しましょう。
1歳未満だとあまり効果がないと聞いたけど…?
WHOや日本小児科学会は生後6か月からの接種をすすめています。
確かに大人よりも予防効果は低く、インフルエンザワクチン自体も他のワクチンと比べると予防効果がそれほど高くないので、ウイルスの感染を完全に防ぐことはできません。
しかし、インフルエンザの症状が出ないようにしたり、脳炎などの重い病気になるのを防ぐ効果はありますので、ワクチンを接種する意味は大きいです。生後6か月を過ぎたら接種することがすすめられています。
新型コロナワクチン(臨時接種)
新型コロナウイルス感染症を防ぐワクチンです。新型コロナウイルス感染症は新型コロナウイルスによって起こる感染症で、2019年末頃から今まで世界中で流行しています。
新型コロナウイルス感染症では、発熱や咳、倦怠感などのかぜに似た症状が出ます。症状がない場合もありますが、味覚や嗅覚がなくなったり、頭痛、下痢、皮膚の発疹などの症状が出てくる場合もあります。
子どもは大人よりも症状が軽いと言われていますが、発熱や倦怠感、のどの痛み、嘔吐など子どもにとってつらい症状が出ることもありますし、肺炎や熱性けいれん、脳炎、心筋炎など重い病気を引き起こすこともあります。
2022年以降子どもの感染が増えたことにより、重い病気になって入院したり、死んだりしてしまう子どもが増えています。これまで特に大きな病気がない子どもが死んでしまったケースもあります。
また、コロナ発症時の重症度に関わらず、強い倦怠感やブレインフォグ(記憶障害、集中力不足、精神的疲労など)などの後遺症が残ることもあり、子どもたちの将来への影響が心配されています。
新型コロナワクチンの対象年齢は生後6か月以上です。無料で接種することができます。生後6か月~4歳の子どもでは3回接種が必要で、標準的なスケジュールでは、1回目の3週間後に2回目、2回目の8週間後に3回目を接種します。3回接種が終わった方は2023年9月20日以降に(3回目から3か月以上あけて)追加接種が1回ある予定です。
新型コロナワクチンの前後にインフルエンザ以外のワクチンを受けるときには、2週間以上あけることが必要です。インフルエンザワクチンの場合は同時接種や期間をあけずに(次の日でも)接種することが可能です。
でも新しいワクチンやから打つの心配やなぁ…
その気持ちはよく分かります。子どものことだし慎重になりますよね…。ただ、副反応は大人よりも軽く、重い副反応は報告されていません。娘は2歳で3回接種しましたが、いずれも特に副反応なく次の日も元気に保育園に行けました。ただの一例ですが、参考になればと思います。
2022年以降子どもの新型コロナウイルス感染症が増えてきたことや、ワクチンの効果(発症や重症化を予防する)の大きさを考えて厚生労働省や日本小児科学会では生後6か月以上の子どもすべてに新型コロナワクチン接種を推奨すると言っています。以下のサイトも参考にしていただければと思います。
厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A 乳幼児接種(生後6か月~4歳)」
日本小児科学会「生後6か月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」
新潟県医師会「子どもの新型コロナウイルス感染症への対応について」
副反応については次の項目も読んでいただいて、接種を検討していただければと思います。
副反応ってなに?
予防接種には「副反応」っていうのがあるんやろ?
「副反応」というのはワクチンを接種して、感染症に対する免疫ができる以外の反応のことです。
副反応の多くは発熱したり、注射した部分が腫れるといった比較的軽く、短期間で治るものです。ごくまれに重いアレルギー反応など、重症の副反応が起きることがあります。
副反応が起こる頻度はワクチンの種類によって違いますが、軽いものは0%から20~30%くらい、重いものは約10万接種に1回くらいと言われています。
ただし、重い副反応については医療機関から報告された数から割り出した数値であり、本当に予防接種が原因であるとは言い切れないものも含まれています。万が一、予防接種によって健康被害が生じた場合には医療費などの救済制度があります。
副反応は軽いものが多いと分かっててもやっぱり心配やな…
やっぱりちょっと怖いですよね…。ただ、実際に病気にかかった時のリスクとワクチンを打った時のリスクを考えてみましょう。
医薬品には副作用(副反応)がつきものですが、ワクチンほど世界中で広く使われている上に使った後の調査も行われて、安全性が保証されているものは他にありません。また、ワクチンを打って重い副反応が出るよりも病気にかかって重症になる確率の方がはるかに高いのも事実です。事実を知った上でよく考えていただければと思います。
予防接種の受け方は?
実際に予防接種を受けるにはどうしたらええの?
予防接種の受け方には「個別接種」と「集団接種」の2種類があります。
予防接種の多くは「個別接種」といって、接種する時期が来たら自分で医療機関に予約して受けるものです(予約が必要ない医療機関もあります)。
「集団接種」というのは自治体から案内された日に保健センターなどで接種する受け方です。自治体によってはBCGや新型コロナワクチン接種を集団接種で行っている場合があります。
受けるのに必要なものってある?
母子手帳、予診票、接種券(必要時)、任意接種の場合はお金が必要です。
母子手帳には予防接種の記録欄がありますので、必ず持っていってください。接種したら接種日やワクチンの種類、接種した医療機関名などが記入されます。お子さんが大きくなってからも、いつどんな予防接種を受けたかを確認できる大事な記録になりますので大切に保管してくださいね。
予診票はワクチンごとに毎回必要です。事前に必要事項を記入して持っていきましょう。
定期接種ワクチンの予診票は自治体からもらえますが、出生届を出した時などに一気に全種類渡される場合や、接種時期に合わせて郵送や健診で渡される場合など自治体によっていろいろです。もらったら大切に保管してください。ただ、なくしたとしても自治体の担当部署や医療機関でまたもらえますので安心してくださいね。
任意接種ワクチンの予診票については医療機関でもらってください。
新型コロナワクチンの接種券や予診票は自治体から郵送される場合と、自分で申請しないともらえない場合があります。お住まいの自治体はどうか確認しておきましょう。
接種スケジュール例
どんなスケジュールで受けたらいいか教えてくれへん?
日本小児科学会が推奨するスケジュールに従って一例をお伝えしますね。
ヒブワクチン1回目、小児用肺炎球菌ワクチン1回目、B型肝炎ワクチン1回目、ロタウイルスワクチン1回目、四種混合ワクチン1回目
ヒブワクチン2回目、小児用肺炎球菌ワクチン2回目、B型肝炎ワクチン2回目、ロタウイルスワクチン2回目、四種混合ワクチン2回目
ヒブワクチン3回目、小児用肺炎球菌ワクチン3回目、ロタウイルスワクチン3回目(ロタテックの場合)、四種混合ワクチン3回目
BCGワクチン
※BCGワクチンは生後5~8か月での接種が推奨されています。ただしBCGワクチンが集団接種の場合は自治体から案内される日に接種となります(同時接種はできません)。
インフルエンザワクチン1回目、新型コロナワクチン1回目・2回目
※インフルエンザワクチンは生後6か月以上で10~11月に接種が推奨されています。新型コロナワクチンは生後6か月以上でできるだけ早めに接種することが推奨されています。
B型肝炎ワクチン3回目、インフルエンザワクチン2回目
※B型肝炎ワクチン3回目は生後7~8か月での接種が推奨されています。
新型コロナワクチン3回目
予防接種スケジュールについては、KNOW★VPD!が作ったスケジュール表が見やすいのでご活用ください。
同じ時期に何種類も接種しないといけないんやね…!
そうなんです。大変なので「同時接種」がすすめられています。
「同時接種」とはいくつかの異なるワクチンを同じタイミングで接種することです。同時接種をすることで医療機関に行く回数が減るので、保護者の方の時間的な負担を大幅に減らすことができます。
1回に何本も注射を打ったりすることになるので心配になるとは思いますが、同時接種をしても副反応が増えたり、予防効果が落ちたりすることはありませんので安心してください。
どういうスケジュールで打つか、かかりつけの先生と相談しながら予防接種を進めていただければと思います。
新型コロナワクチンについてはインフルエンザワクチンのみ同時接種可能です。他のワクチンとは前後2週間以上あけないといけませんのでご注意ください。
[…] 内される日に接種することになります(集団接種についてはこちら)。 […]