今回は子どもの目についてのお話です。
おぉ。ピンポイントやね。
第2回目は気になる子どもの目の病気についてお話しします!
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目の病気にはどんなものがあるの?
斜視とか遠視とかってよく聞くけどどういう状態なん?
乳幼児期の主な目の病気についてお話ししますね!
さかさまつげ(内反症)
まつげが何らかの原因によって黒目や白目に触れている状態のことです。
乳幼児では下まぶたの皮膚が盛り上がっていることが原因でさかさまつげになっていることが多いです。ただ、まつげが細くて弱いので、さかさまつげがあっても重い症状が出ることは少なく、成長とともに顔がひきしまって自然と良くなることがほとんどです。症状が強ければまつげの向きを変える手術が行われます。
子ども自身はまつげが目に触れている状態に慣れているので、自分から症状を訴えることはほとんどありませんが、目に違和感があって、よく目の周りをこすっていることがあります。また、眼がうるんでいる、充血しやすい、目やにが出るなどの症状があれば眼科を受診しましょう。
先天性鼻涙管閉塞
涙腺から涙が出ると一部は眼の表面から蒸発しますが、ほとんどは目頭にある涙点に吸収され、管を通って涙嚢にたまり、鼻涙管を通って鼻に出ていきます。
赤ちゃんの中には鼻涙管の中に薄い膜のようなものが残って、鼻涙管が開通していない状態で生まれてくる子がいます。これが先天性鼻涙管閉塞です。
鼻涙管がふさがっていると涙は鼻に出て行けず、眼にたまってしまいます。涙はうまく鼻に流れていかないと細菌感染を起こしやすくなるため、常に眼がうるんでいるだけでなく、目やにがたくさん出たりします。
先天性鼻涙管閉塞のほとんどは涙嚢マッサージと呼ばれる、家でできる鼻の付け根あたりのマッサージで治ります(目やにが多ければ点眼もあります)。これで症状が治らない場合は管をふさいでいる膜を破る治療が行われます。
常に眼がうるんでいたり、目やにが多い場合は受診しましょう。
斜視
斜視は両眼の視線が同じ方向を見ていない状態です。斜視は子どもの約2%にみられます。斜視があると視力が十分に成長しなかったり、物を立体的に見られなくなったりするため治療が必要です。
赤ちゃんの頃は目頭の皮膚が白目にかかっていることがあり、眼が内側に寄っている「内斜視」のように見えることがあります。この場合は実際には同じ方向を見ているので斜視ではありません(偽斜視)。
フラッシュを使ってカメラ目線の写真を撮ってみて、黒目の中の光が両目とも同じ位置にあれば斜視ではない可能性が高いです。
ただし、本当に斜視かどうかを判断するのは難しいので、生後6か月を過ぎても内斜視のように見えるのであれば眼科を受診してください。
子どもで最も多いのは間欠性外斜視です。普段は無意識に目に力を入れて目が外側に向かないようにしていますが、体調が悪い時や眠い時、ぼーっとした時などに視線が外側にずれるものです。また、まぶしい時に片目だけつぶりやすくなります。状態によってメガネや手術での治療を行います。
次に多いのが調節性内斜視です。元々遠視があり、物をはっきり見ようとするときに過剰にピントを合わせようとして内斜視になるものです。遠視の矯正メガネをかけると目の向きのずれがなくなります。1歳6か月~3歳の発症が多いです。
斜視になっている時は、片目でしか物を見ていないか、物が2つに見えています。子どもの場合、ずれている方の目の情報を脳が消去してしまうため、物が2つに見えるということは少ないです。斜視があると、物を立体的にとらえたり、正確な距離感をつかむために必要な両眼視機能が低下して、ボール遊びや平均台などが苦手になります。
混乱しないために実際見えているものを脳が消してしまうなんて…!
後にお話しする弱視につながる可能性もありますので、斜視に気づいたら早めに眼科を受診してください。
近視・遠視・乱視
目はカメラと同じようなつくりをしています。見ている物の像のピントがちょうど網膜面で合えばはっきり物がよく見えます(正視)。これが網膜面からずれてピントが合ってしまうとピンボケになってはっきり見えません。これを屈折異常と言います。
網膜面より前でピントが合う状態を近視、後ろでピントが合う状態を遠視、ピントが1点に合わない状態を乱視と言います。
最近、スマホやゲーム機の影響で近視の子どもが増えてきていると言われていますが、乳幼児では遠視や乱視の方が多いです。多くの場合、生まれつきのもので特別な原因はありません。
遠視は遠くがよく見える目と思われていますが、実際には遠くも近くもぼんやりして見えにくい目です。子どもの場合、多少ピントがずれていてもピントが合うように調節する能力が高く、遠視があっても不自由しない程度に見えていることも多いので気づきにくいです。
ただ、遠くを見るときも近くを見るときも常にピントを合わせようと努力している状態なので、疲れやすく、頭が痛くなったり、読書やお絵かきなどが長続きしなかったりします。また、ピントを合わせようとがんばりすぎて内斜視になる場合もあります。
遠視や乱視の程度が強いといつもピンボケの物しか見ていないことになるので、脳への刺激が足りず、視力が十分に成長しない弱視になることがあります。
近視の場合は、近くの物にはピントが合うので弱視になるリスクは低いです。
斜視や弱視もある場合や、メガネをかけないと視力が悪く、日常生活に不便がある場合はメガネでの治療を行います。
弱視
「弱視」は、「通常の教育を受けるのが困難なほどの低視力」という意味で一般的に使われていますが、医学的には「視力の発達が障害されて起きた低視力」のことを言います。
第1回目の「目の発達」のところでお話ししたとおり、弱視は脳の発育障害なので、メガネをかけてもよく見えるようにはなりません。
弱視の原因には次のような4つの原因があります。
近視・遠視・乱視の程度が強いためにおこる弱視で、一番原因として多いのは遠視です。
遠視では近くでも遠くでもピントが合わないのでメガネをかけない限りくっきりと物を見ることができません。生まれつきはっきり物が見えない状態でいると、脳に刺激が与えられず、視力が発達しにくくなります。
目を細めてみる、極端に近づいて物を見る、横目や上目遣いで見るなどの症状で気づくことがありますが、程度が軽い場合は3歳児健診や就学時健診の視力検査で気づく場合が多いです。
治療は眼にあったメガネをかけることです。早く治療を開始するほど、早く視力が発達しますが、メガネを外すと見えにくい状態はずっと続くため、視力が改善してもメガネを外せるようにはなりません。
近視・遠視・乱視の左右差が強いために起こる片眼の弱視です。片眼の視力は正常なため、日常生活では問題なく、周りからは全く分かりません。3歳児健診や就学時健診での視力検査や屈折検査で見つかる場合が多いです。
よりよく見える方の眼の視力が先に発達し、もう一方の眼の視力発達は取り残されるため、片眼だけの弱視の方が両眼の弱視よりも重症化しやすいです。
治療はメガネをかけて行いますが、必要に応じて視力がいい方の眼をふさいで、視力が悪い方の目を使わせる健眼遮蔽が行われることもあります。視力の左右差がなくなって、安定して視力が維持できれば健眼遮蔽は終了になります。
早く治療を開始するほど、早く視力が発達しますが、メガネを外すと片眼が見えにくい状態はずっと続くため、視力が改善してもメガネを外せるようにはなりません。
斜視があるために起こる片眼の弱視です。両眼の視線がずれていると、右眼と左眼はそれぞれ別の物を見てしまうため混乱します。この混乱を避けるために、斜視がある方の眼に映った像を脳が消してしまう働きが起こるため、斜視がある方の眼では視力が発達せず弱視となります。
斜視が原因といっても、見た目に分からない程度の軽い斜視のこともあります。また、片眼の視力は正常に発達しているため、周りからは全く分かりません。3歳児健診や就学時健診での視力検査や屈折検査で見つかる場合が多いです。
治療は斜視側の眼を矯正し、視力を上げるための健眼遮蔽や薬剤の点眼です。斜視手術を行うこともあります。
見たい物から網膜までの間に障害物があり、はっきりと見ることができないままいると起こる弱視です。この弱視は乳幼児期にだけ起こります。代表的な原因は、先天白内障です。そのほか、乳幼児期に眼帯をしていたり、まぶたに血管腫などがあってまぶたを閉じたままでいると弱視になる可能性があります。
視力がどれくらい良くなるかは、物を見られなくなった時期や時間、程度などに左右されるので、できるだけ早く異常を見つけて原因を取り除くことが大事になります。
先天白内障では水晶体の混濁の程度に応じて手術が行われます。また、経過観察の中でメガネをかけたり健眼遮蔽をしたりする弱視治療が行われます。
先天白内障では瞳の中が白く濁って見えます。この症状を見つけたら早急に眼科を受診しましょう。
うーむ、病気があっても普通に生活できることも多いんやなぁ。
そうなんです。だから健診などでの検査が大事になります。次回は目の検査についてお話ししますね!
参考サイト
- 日本眼科医会「3歳児健診における視覚検査マニュアル」
- 日本眼科医会「目についての健康情報」
- 日本弱視斜視学会「斜視・弱視の病気の説明」
- 日本眼科学会「目の病気」
- 日本小児眼科学会「子どもの眼の発達と年齢ごとの異常所見について」、「子どもの眼の病気」